まっとうな新入社員の初々しさ。

いらっしゃいませ (角川文庫)

いらっしゃいませ (角川文庫)


この頃、会社がらみの小説ばかり読んでるなぁ。
なんだか不思議だ。その世界からはリタイアして暫く経つんだけど。
それはさておき、この本は読んでいてたいへん気持ちよかった。
主人公は「鈴木みのり」という。
彼女の、短大在学中の就職活動から某出版社に入社、その年の末までを
私小説風に綴った作品である。
出版社なのになぜ『いらっしゃいませ』なのかといえば、
それは彼女の配属が受付だったから。
「みのり」の視線はいつもまっすぐだ。
「自分のことばかり考えている」と彼女は思っているが
それは自分勝手、したい放題だからということではなく
しっかりとした自分のスタンスを確立したいと願っているからだ。
せっかく出版社に入ったのに受付なんて、などと
身の程知らずなことは念頭にない。
仕事に人間関係に揉まれながらも、彼女は飄々と日々を送る。
そのまっとうな姿勢が清々しく、とてもきれいなのだ。
何だか読んでいる自分が恥ずかしくなってしまって
ちょっと頭をかいてしまうような、そんな魅力のある小説だった。


それでは、今日はこのへんで〜。