森絵都さんが描く、中学生の女の子

つきのふね (角川文庫)

つきのふね (角川文庫)


森絵都さんの小説は、10代の女の子に絶大な人気があるときく。
最近お書きになったものは「大人向け」として
好評を博したとのことだが
本書のような、瑞々しい少女たちの物語を読むと
同世代からの圧倒的支持もよくわかる。
とにかく、女の子の心情の描き方が秀逸なのだ。
大人になるとすっかり忘れてしまうような、
その年頃特有のゆらゆらする不安やひりひりした恐れみたいな感じが
行間に滲んでいる。
大人が読んでいて、痛さをおぼえるような小説だ。
ただ、このお話の場合、主人公を取り巻く「大人たち」の
人物造詣がやや希薄かな。
そのせいか、なんとなくおとぎ話っぽい。
児童文学だからそれでもいいじゃない、なんていわせることなく
もっともっと深いものをお書きになる小説家さんだと思うので、
これからの作品を楽しみにしている。
『永遠の出口』の紀子と、『つきのふね』のさくら。よく似てる。