30年前の、菜の花の風景

菜の花畑のむこうとこちら (ソノラマコミック文庫)

菜の花畑のむこうとこちら (ソノラマコミック文庫)


は〜、いいものを読ませていただいた。
心温まるってこういうことだよね、と再認識した短編集だった。
短編といっても連作集で、初出は1975年の『別冊少女コミック』(小学館)。
当時はすでに熱烈漫画少女(!)だったわたしだけど、
どういうわけか小学館系の漫画はそれほど縁がなくて
樹村みのりさんの作品もほとんど読んでいない。あるいは覚えていない。
でも、その評判は耳にしていて、一度はしっかり読んでおきたかった。
なるほど〜、このヒューマニズムって素晴らしい!
すべての作品に、それはそれはあたたかい血が通っている。
ちょっとした日常の一こまに、感動を覚えてしまう。
一連の物語の主人公である「まあちゃん」は、幼稚園年長さんの女の子。
そのころ、少しだけ年上だった当時のわたしと彼女は、
きっと同じ視点でものごとを見ている。
頼もしくて優しい大人たちを、賑やかな一方で繊細な女子大生さんたちを。
家のちゃぶ台に集う人々の悲喜こもごもを。
また、これらの作品に描かれている70年代の風情が本当に懐かしい。
畳の部屋、木造の教室、黒電話。
戦争にまつわる話だって、それほど違和感のなかった時代だ。
今の年齢になってわかってきたことだけれど、実は「30年前」なんて
そんなに昔々ではないのだから。
ノスタルジーにあふれた、心にしみる名作の数々。
どうぞ皆さま、この本を手にとってみてくださいませ。


それでは、今日はこれにて♪