未知なるもの、がん。

がんから始まる (文春文庫)

がんから始まる (文春文庫)

この半年ほどの間に、身近な人々に相次いで「がん」が発見された。
そのうちの二人は夫の友人であり、年齢もおひとりが20代、
もうひとりの方は40歳と、いかにも年若くしての発病である。
幸いにも、上記のお二人を含め、どの方も懸命のご治療の甲斐あって
症状は快方に向かわれている。
しかし、わたしにとっても夫にとっても、それは重い、
衝撃の出来事だった。
これまではどこか他人事で、いつかは自分にも訪れる困難であろうけれど
時間的猶予はまだまだある、大丈夫と思っていたのが
いつ何時、我が身に降りかかってもおかしくないのだということを
目の前に突きつけられた。
そんなふうに、怖くて重苦しい気持ちをかかえつつ
ふと目にした、この本を読んでみる。
著者の岸本葉子さんのことはもちろん知っていた。
小気味のよいエッセイを何度か拝読し、きっと元気で聡明な方なのだろうと
うんうんと共感したり、それとは裏腹に
あまりに前向きな考え方に、ちょっとした違和感を感じたりしていた。
そんな彼女が、40歳という若さでがん告知を受ける。
それからの日々の葛藤は、想像を絶するものであったはずだ。
けれども、岸本さんは入院、手術、治療、そして退院を経て
日常生活をきちんと律し、病の苦しみを受け入れつつも
自らの意志を整えてゆく。
心底、すごいな、と感服した。
もちろんつらいお気持ちも吐露してはいるけれど、それ以上に
未知なるものを真剣に、必死に見つめる視線に胸を打たれた。
いつまでも妙味のある、極上のエッセイを書き続けてほしいと
願うばかりである。
わたしも、もう少し自分の体を大事にしよう〜。


それでは、今日はこのへんで♪