痛快!江戸後期の「ずっこけ三人組」。

藩校早春賦 (集英社文庫)

藩校早春賦 (集英社文庫)


とにかくページをめくる手がどんどん早くなっていくような、
心躍る、痛快な小説だった。
本作は、本の雑誌社編集の『おすすめ文庫王国〈2005年度版〉』の中で
時代小説の傑作として掲載されていた『夏雲あがれ』の、
プロローグとなる作品である。
まもなく激動の時代を迎えようとしている江戸時代後期の
東海地方の小藩(おそらく遠州地方であろう)を舞台に、
武家の子である十代半ばの少年たちが大活躍する。
かの地の穏やかな気候さながらに、明るくのんびりと過ごす日々に
少しずつ「大人の闇の世界」が忍び寄る。
だが、少年たちはかなり無鉄砲に行動を起こしつつも
周囲の温かい目に護られ、成長してゆくのだ。
主人公・新吾を始めとする少年たちの個性は巧みに描かれ、
まるで近しい子どもたちをみるような親しみを覚える。
加えて物語の展開の早さは、読者をぐいぐいと引きつける。
本当に、読んでいて楽しかった。
青春時代小説、三人の少年の成長物語というと
わたしはどうしても藤沢周平著『蝉しぐれ』を思い出してしまうのだが
『藩校早春賦』は、その明朗さにおいて違った趣があった。
こうなれば早く、続きの『夏雲あがれ』を読まなくちゃ!と
意気込んでいる。
新吾と幼馴染・志保の行方も気になるところだし〜。


では、本日はこれにて♪