[読書]日常を深く生き抜くために。

春になったら莓を摘みに (新潮文庫)

春になったら莓を摘みに (新潮文庫)


西の魔女が死んだ』などの諸作で人気の高い、
梨木香歩さんの、初めてのエッセイとのこと。
わたしはどうも児童文学&ファンタジーの取り合わせが苦手で、
今までこの方の本はパラパラと立ち読みする程度だった。
けれども、以前、どなたの作品であったか失念したけれども
文庫本の「解説」が非常に的確で論理的な文章であったことが印象深く
最近自分がエッセイを好んで読んでいることもあって
この一冊をまず選んでみた。
そして、読み終わってみれば、やはり、というか
想像以上に深く、心に響く文章の数々であった。
最高級の随筆である、と思う。
著者が学生時代をすごした英国の下宿の女主人、
それから様々な国の、様々な考え方を持つ人々との交流を
凛とした姿勢を崩さず、淡々と描いてゆく。
その文章はまさに香り立つようだ。
日常を深く生き抜く、とはどこまで可能なのか。
どんな考え方の人々とも「共感」をわかちあうにはどうすればいいのか。
筆者の思索はどこまでも深遠で、かつストイックなものである。
国際的感覚の豊かな梨木さんのものの見方は
身の回りしか目に入らないわたしには非常に新鮮だったし、
自分自身を振り返る良い機会ともなった。
この一冊から出発して、彼女のフィクションの世界へ迷い込んでいくのも
また楽しいものかな、なんて考えたりもする。
とても有意義な読書の時間を過ごすことができた。
ありがとうございました、梨木香歩さま。


それでは、今日はこれまで♪