現代病理とトンデモ精神科医のハーモニー?!

イン・ザ・プール (文春文庫)

イン・ザ・プール (文春文庫)


先日、京都へ出かけたときのことを日記に書いたが
その際、往路の電車に揺られながら読んだ一冊である。
いやいやいや、笑いましたわ。
しかも、ガハハと大笑いするとかクスクスと小さく笑うではなく
ハハッと腹の底から、冷や汗掻きつつ笑うというか。
深刻な病状(傍から見れば随分変わった症状だが)に悩む患者たちは
「コイツこそマジでやばいんじゃないのか?」な精神科医
驚き、あきれ、時には圧倒され、ついには皆自分のほうが
完全にブチ切れる。
そして、一種のカタルシスと共に、患者たちの症状は
それぞれ改善してゆくのだ。
起承転結のはっきりした、痛快な短編をここぞとばかりに楽しめる。
しかし、語り口こそ軽妙だけれど、登場する症状は身近であり
誰もが体験しておかしくないことばかり。
作者である奥田英朗さんは、それらを茶化さない。
ジャンルこそコメディに近いが、病気への取り組み方は
いたって真摯である。
だからこそ、偉大な主人公(笑)たる「伊良部一郎」は
読者に強烈な印象を残すのだ〜。
この続編である、直木賞受賞作『空中ブランコ』も
読んでみたいものですなぁ。
またもや一気読みしてしまいそう。わはは。
さて、余談だけど。
この作風は、漫画だったら弓月光さんに近いものがあると思った。
正統派で安定した筆力から生まれる「トンデモキャラ」!
皆様はどうお感じになるのでしょう?


では、本日はこれにて♪