「かくしごとのない家族」の真実って?

空中庭園 (文春文庫)

空中庭園 (文春文庫)


角田光代さんの本を読むのは初めて。
対岸の彼女」で第132回直木賞を獲得されているが、
それ以前にこの作品も候補に挙がっていたそうだ。
たしかに読み応えがある。
テンポの良い平易な文章で小難しい哲学性など感じさせないが
小説の途中でつい考え込んだり、登場人物を叱咤したくなったり。
そして、読み終わったときはため息をついてしまった。
かくしごとのない家族」を演じる「うさんくさい家族」の真実が
幾層にも重なって妙に落ち着かない気持ちになった。
だけど、家族にそういうねじれや居心地の悪さが存在するのは
別に特別なことじゃない気がする。
実は家族みんなが秘密を持っているなんて当たり前のことじゃないか。
けれども、角田さんの描写はその辺の際立たせ方がとても上手いのだ。
田畑の中にどんと造られた団地、ショッピングセンター、ラブホテル群。
そういった背景にしても光と闇が存分に伝わってくる。
この、普通より壊れ方の激しい家族の未来はどうなっていくのだろう。
意外と簡単にはジ・エンドにならないようなしぶとさも感じる。
角田光代さん、予想以上に肝の据わった作家さんとみた〜。
さて次はどの作品を読もうかな、とまたもや嬉しい悲鳴なのだった。


それでは本日はこれにて〜♪