さきちゃんは9歳、お母さんと二人暮らし

月の砂漠をさばさばと (新潮文庫)

月の砂漠をさばさばと (新潮文庫)


今、朝日新聞夕刊にて北村薫さんの「ひとがた流し」が連載されている。
この新聞小説に「月の砂漠をさばさばと」の母子が登場していると聞き
未読だったこともあって、さっそくこちらを読んでみた。
さきちゃんと、お話を書く仕事をしているお母さんのささやかな日常が
楽しくて、切なくて、ドキドキする。
それにしても、主人公のさきちゃんは健気だ。
日々、母親とのちょっと愉快なやりとりの中、無意識のうちに
彼女は家庭を護っている。
もちろん母親も気丈だ。いつだって娘を見守っている。
こうした家庭を護りたいという気持ちは、二人暮らしであるだけに
なおさら強いものなのだろう。
ときには、痛みを感じることもあるはずなのに。
誰だってあたたかな家庭を、穏やかな日常を護りたいと願う。
だけど、現実にはなかなかそううまくはいかない。
情けないエゴに、また生活に振り回されることばかり。
だからこそ、「さきちゃんとお母さん」の頑張りと
お互いを思いやる気持ちの深さに、とても感動してしまう。
そのあたりの視点については、梨木香歩さんの解説が非常に的確で
ああなるほど、と納得することしきりだった。
また、おーなり由子さんの挿絵が素晴らしい!
優しさに満ち溢れている。
この方の「りぼん」時代が懐かしいな、なんて
元・漫画少女はうっとりしてしまうのだった。


では、本日はこれにて閉店〜♪