古き良き、愛すべきものたち

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)


単刀直入に言おう。いい小説だった!
読んでいる最中も読み終わってからも、元気が出てきた。
わたしも、もうひと踏ん張りしようと前向きな気持ちになった。
今や珍しいことこの上ない「江戸っ子気質」の青年落語家が主人公。
ひょんなことから彼の元に「性格的にうまく話せない」4人が集まり、
落語の勉強会を始めることとなる。
その面子も実にユニーク。
意地っ張りな小学生、気の弱い大学生(主人公の従兄弟)、
何事にも抗戦体勢の美女、鼻つまみ者の元・プロ野球選手。
彼らは頑張ったり頑張らなかったり。わりとよくいがみ合いもする。
そのうえ指南役までスランプに陥る・・・。
と、まあそんなふうに基本的なスタンスは変わることなく
ときにすったもんだを経て少しずつ連帯感を深めてゆく人々と
移りゆく季節が描かれる。
何といっても登場人物ひとりひとりの描写が素晴らしい!
特に主人公と小学生。わたしは大好きだ。
古き良き時代があるとするなら、そこからふらりとやってきたような人たち。
また、小説のなかを一貫して流れているのが「落語」。
そのうんちくを知ることも楽しい。
主題に通じるところもあるけれど、興味深かったのは落語とジャズを並べて
「もう終わった時代のものだから」と語られる場面。
「もう志ん生は出ないやね」、それならそれでいいじゃないか、なんて
エラそうに思ってしまったのだった。
古いものがなければ、新しいものだって生まれないのだから。
ついでに、世の中に無理やり自分を合わせなくったっていいじゃないかと
少しだけ大らかな気分になった。
なんて幸せな読書。楽しかった!


はい、先ほどの答え、1710円でした〜。
高いのか安いのか(笑)
それでは本日はこれにて閉店〜♪