道さんの、長い道

長い道 (Action comics)

長い道 (Action comics)


こうの史代さんの漫画は「夕凪の街 桜の国」に続き
わたしにとって2冊目である。
この社会派漫画(・・・だと世間では言われているらしい)が
大変評価の高いものであるだけに
同じ出版社から次に出される作品は相当注目されていたと思う。
だけど、場違いみたいな視線を軽く受け流し
主人公の「道さん」はくすくす笑っていらっしゃるのだった。
親同士の冗談のあげく、まったく甲斐性なしのだんなさんと結婚、
それでも彼女は淡々と、楽しげに日々を過ごす。
心に清算しきれていない過去を隠して。
例えるなら道さんは、そう、菩薩さまのような女性なのだ。
それにしても、こうの史代さんの表現の豊かさ、洞察の深さたるや
素晴らしいものだと感動するばかり。
漫画で詩を綴っている、そんな気がする。
先にあげた「夕凪の街 桜の国」もある意味叙事詩の趣があり
難しい表現を使わず、とつとつと読者に語りかける。
温かな色彩、やわらかな画風、それはそれはしみじみと。
まるで「北風と太陽」のお日様のほうに
笑い、泣かされているようだ。
こんな漫画が、まだあったんだ!
こうの史代さんのこれからのご活躍を願ってやまない。
とりあえず次は「ぴっぴら帳」シリーズを読んでみようっ。


それでは、しばし月を眺めつつ閉店〜♪