夏の寓話の少女たち

蛇行する川のほとり

蛇行する川のほとり

まず、装丁の美しさに目を引かれた。
恩田陸さんの小説は「夜のピクニック」以来だったが
この作者さまの作品、さて次に何を読もうか、と
某古書チェーン店にて選んでいたとき(すみませんビンボーで)
迷わず手にした一冊だ。
そして、美しいのは装丁ばかりではなく
内容もとてもきれいで哀しい、ファンタジックなミステリーだと知った。
物語の舞台となるのは「どこか異国の絵本のような浮世離れした」場所。
木々の緑、小さな野原、ゆっくりと流れる川面、それから洋風の古い家。
過去、そこで起こった事件はひそやかに、
十数年後の夏の今、また悲劇の歯車を回し始める。
川のほとりに集う少女たちは、みなそれぞれに輝いているのに。
だけど、彼女らが内包する恐怖や絶望までも水晶のような光を放つ。
そして結末は決して明るいものではないけれど
読後感は清々しさに満ちている。
そのあたりは、この小説のいちばんの魅力だと思う。
また、おとぎ話のような語り口ながら、ストーリー展開も小気味良い。
三部構成(プラス終章)からなる物語だが
第一・二部のラストにはどれも衝撃的なセリフが配されていて
すぐに続きが読みたくなり「やめられない止まらない」状態に陥った。
そんなわけであっという間に読み終わってしまったけれど
貴重な数時間を、存分に楽しめた。
ところで余談だけど、この本を読んでいる間
岩館真理子さんの「アリスにお願い」という少女漫画を思い出していた。
人物や舞台の設定が少し似ているということと
どちらも本格的なミステリーを上質のファンタジーに仕上げている点で
そんなふうに感じたのかな。
とはいえ、発表された時期を見れば「アリスにお願い」のほうが先。
恩田さんは少女漫画をよくお読みになるそうだし
これはきっと岩館さんの漫画も読破しているにちがいない、と
意地悪(?)なことを考えてしまうワタシだった〜。わはは。


それでは本日はこれにて閉店〜♪
「晩夏シリーズ」はもうちょっと続けるつもり(でも予定は未定)。